夜中にトイレへ行こうとして、階段の途中で足がすくむ。
手すりにつかまらないと、もう降りられない。
親からそんな話を聞いて、ひやっとしたことはありませんか。
「うちはまだ大丈夫」と思っていても、きっかけは急に来ます。
家の中で転ぶ場所というと、浴室や廊下が浮かびがちです。
でも、けがが重くなりやすいのは階段のほうです。
私は住宅改修や福祉用具の仕事に関わっています。
階段の対策は「手すり・滑り止め・明るさ」の3つで考えると、迷いにくいと感じています。
この記事では、それぞれの考え方と費用の目安、介護保険で使える範囲をまとめます。
階段でつまずく原因は、段鼻・踏面・手すりの3つです
- 段鼻(段の先端)が見えない
床材と同じ色だと、段の境目が分かりません。降りるときにつま先が引っかかります。 - 踏面(足を乗せる面)が狭い
古い木造住宅では20cmを切ることもあります。かかとが落ちて、体重を後ろに残せません。 - 手すりが片側だけ、または途中で切れている
利き手で持てないと、体をひねった姿勢で降りることになります。
手すりは上から下まで途切れずに付けます
階段の手すりで大切なのは、太さやデザインより「連続していること」だと私は考えています。
踊り場で一度切れると、そこで持ち替えが起きます。
いちばん不安定な場所で、手が離れてしまうわけです。
曲がり階段でも、曲げ用の部材を使えば連続させられます。
高さは段鼻から750〜800mmがひとつの目安です。
実際には、使う方の手の位置に合わせて上下させます。
端は下向きか、壁側に曲げて納めます。
切りっぱなしだと、袖やポケットが引っかかるからです。
取り付けは、柱や間柱などの下地に留めます。
石こうボードだけに留めた手すりは、体重をかけた瞬間に抜けることがあります。
下地がない壁では、先に補強板(受け板)を張ります。
見た目は少し出っ張りますが、安全性を優先するほうが後悔が少ないはずです。
滑り止めは「貼る」か「段鼻ごと替える」かで選びます
階段の滑り止めには、段板に貼るテープやシートと、段鼻の部材ごと替えるタイプがあります。
貼るタイプは安く、早く終わります。
ただ、端がめくれると、それ自体がつまずきの原因になります。
選ぶなら、端がしっかり留まる製品がおすすめです。
色を変えるだけでも効果はあります。
段鼻だけ濃い色にすると、段の境目を目で追えるようになります。
視力が落ちてきた方には、滑り止めより先に効くこともあります。
夜が不安なら、まず足元灯を足します
階段の照明は天井にあることが多いです。
降りる人の体で、足元に影ができてしまいます。
段の脇に足元灯(フットライト)を入れると、影が消えて段鼻が見えます。
人感センサー付きなら、暗い中でスイッチを探す動きもなくなります。
コンセントがあれば、工事なしで置けるタイプもあります。
手軽に試すなら、ここからでもいいと思います。
費用は下地の有無で大きく変わります
| 工事 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 階段手すり(直線・1階分) | 5万〜12万円 | 長さ3〜6m。曲がりや踊り場があると部材が増えます |
| 下地補強板の設置 | 2万〜5万円 | 壁に下地がない場合。クロスの張り替えが要ることもあります |
| 滑り止め(貼るタイプ・1階分) | 2万〜6万円 | 製品と段数によります |
| 足元灯(コンセント式) | 数千円〜 | 配線を隠すなら電気工事が必要です |
金額は住宅の状況で動きます。
とくに手すりは、下地の有無を見てからでないと正確に出せません。
介護保険の住宅改修は、手すりと滑り止めが対象です
要支援・要介護の認定を受けている方は、住宅改修費の支給を受けられます。
上限は20万円で、自己負担は所得に応じて1〜3割です。
階段まわりで対象になるのは、主に次の3つです。
- 手すりの取り付け
- 滑りの防止のための床材の変更(階段の滑り止め工事はここに入ることが多いです)
- 上の工事に付帯して必要になる工事(下地の補強など)
一方で、照明の設置は対象外です。
貼るだけの滑り止めの扱いは、市町村によって判断が分かれることがあります。
申請には、ケアマネジャーなどが作る理由書が要ります。
先に工事をしてしまうと支給されないので、順番だけは気をつけてください。
【PR】階段の手すりは、部材の値段より「下地があるかどうか」と「どこまで連続させるか」で金額が変わります。同じ階段でも業者によって見積もりの前提が違うので、1社だけで決めずに比べてみてください。まとめて見積もりを取れるサービスを使うと、その手間が減ります。
工事ができないときは、上り下りの回数を減らします
玄関や廊下で使う突っ張り式の手すりは、階段には使えません。
段差があり、体重が斜めにかかるためです。
賃貸などで工事ができない場合は、段鼻の色分けと足元灯から始めます。
そのうえで「上り下りの回数を減らす」ことを考えてみてください。
寝室を1階に移せるなら、私はそれがいちばん確実な対策だと思っています。
まとめ:手すりは連続させ、申請は工事の前に出します
- 階段の手すりは、上から下まで途切れずに握れることを最優先にする
- 手すりは下地に留める。ボードだけの取り付けは避ける
- 段鼻の色分けが、滑り止めより先に効く人もいる
- 介護保険の住宅改修は手すりと滑り止めが対象、照明は対象外
- 申請は必ず工事の前に出す
まずは夜に一度、階段の明るさと手すりの切れ目を見てみませんか。
気になるところが1つ見つかれば、それが最初の一歩になります。
出典:厚生労働省「介護保険における住宅改修」。運用は市町村で異なります。着工前に、担当のケアマネジャーと市町村の窓口にご確認ください。
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